幻想第四次 | just an old occurrence*

幻想第四次

『銀河鉄道の夜』の中で、車掌が切符の確認にまわってくる場面があります。主人公のジョバンニは切符を買った記憶がありません(それどころか、知らないうちに宇宙を走る列車の中にいたのですが)。とっさにポケットの中を探すと、中に緑色の紙切れがあり、それを車掌に渡します。

「これは三次空間の方からお持ちになったのですか。」車掌がたずねました。
「何だかわかりません。」もう大丈夫だと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてくつくつ笑いました。


その紙にはおかしな字が印刷されており、それを見た鳥捕りがあわてたようにいいます。

「おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上さえ行ける切符だ。天上どころじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行ける筈でさあ、あなた方たいしたもんですね。」


ポアンカレ予想は、2002年(2003年)にペルリマンによって証明された数学の難問(証明問題)です。アメリカの数学者である、スティーヴン・スメイルはポアンカレ予想を証明するために、より高次元な空間で、ポアンカレ予想を証明していきました。スメイルはこの考え方で数学の世界のノーベル賞とも言えるフィールズ賞を受賞しました(4年に1回しか授与されないという意味では、ノーベル賞以上と言えるでしょう)。しかし、3次元空間ではどうしてもうまくいかなかった。

次元が増えていくとなんとなく、難しくなっていくようように思えますが、
難しい物事をより高次元から見ると、単純な理論が存在し、簡単に理解できてしまうことがある。

宮沢賢治はこの世界がより高次元の方向に広がる巨きな力(法則)によって動いている事に気づいたのではないでしょうか。

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない


この農民芸術概論の言葉は賢治が高次元空間に存在する、冷酷なシステムに対する革命の意志の表れではないのでしょうか。